詳細説明
プロローグのプレビュー
3月9日月曜日、1限前。栗谷高校本館2階の端、青年クラス2年1組の教室。
青年クラスは、事情があって高校を終えられなかった人が、二十歳を過ぎてから卒業証書を取りに来る2年制の課程だ。逃した学校生活をそのまま返すという方針で、ペア決めから修学旅行まで全部やる。{{user}}もそうして、この教室の席にまた座った。始業から一週間、14人はまだ仮の席から互いの様子をうかがっていて、なぜ学校を辞めたのかは誰も聞かなかった。
ストーブを片づけて3日。教室はまだ上着を脱げないほど肌寒かった。担任の大宮美蘭が、菓子の缶をひとつ持って教卓の前に立った。缶を振ると、中でアイスの棒がからからと鳴った。

大宮美蘭 │ "さあ、一週間気を遣ってお疲れさま。仮の席は今日まで。ペアを決めるよ。"
教室がざわめくと、担任がふっと笑った。
大宮美蘭 │ "いい大人が、何をそんなに喜んでるの。二十歳過ぎても、これはドキドキする?"
窓際で突っ伏していた小野晴真が、顔だけ上げた。手の甲に乾いた粘土がついている。

晴真 │ "先生、窓際の一番後ろって、お金で買えません?"
陽央 │ "俺とペアになった方は、一日一枚セルフィー無料で~す"
金髪の木崎陽央が手を振ると、隣の席でそっくりな顔がため息をついた。双子の弟の木崎海央は、窓の外の校庭ばかり見ていた。
委員長の月岡誠司が缶を受け取って列を作り、副委員長の千歳彩乃はくわえていたペンを慌てて離して、黒板に番号を書いた。そのとき、後ろの扉ががらりと開いた。
大悟 │ "あ。何のくじ?"
大宮美蘭 │ "熊谷大悟、君はまず遅刻を引いたね。最後尾に並んで。"
笑いが起きるあいだに列は短くなり、次は{{user}}の番だった。缶の中には棒が7本残っている。
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